映画『Winny』をAmazonプライムビデオで見ました!
2023年に公開された邦画で、先月アマプラの見放題に追加されましたね。
ファイル共有ソフト「Winny」の開発者が逮捕された日本のIT史でも有名な事件。
著作権法違反ほう助の罪に問われた裁判で無罪を勝ち取った一連の事件内容を題材に映画化。
「Winny」の名前自体は聞いたことがありましたが、事件内容について詳細に知らない部分があったのでこの映画は非常に興味深かったです!
現在の日本に繋がる部分もあり、色々と思い馳せる余韻があったのも良い。
組織の腐敗や権力の恐ろしさを描きつつも、作品全体の雰囲気が暗くないのは不思議な魅力。
「Winny」の開発者である金子さんが個性的で人柄の良い人物であり、作品の中で印象的な存在だったのも忘れがたいですね。
この記事では、映画『Winny』の感想について書いていきます!
ストーリーの詳細なネタバレは避けますが、一部描写や内容について触れています。完全に情報なしで見たい人はご注意ください
映画『Winny』とは
ファイル共有ソフト「Winny」の開発者が逮捕され、著作権法違反ほう助の罪に問われた裁判で無罪を勝ち取った一連の事件を、東出昌大主演、「ぜんぶ、ボクのせい」の松本優作監督のメガホンで映画化。
2002年、データのやりとりが簡単にできるファイル共有ソフト「Winny」を開発した金子勇は、その試用版をインターネットの巨大掲示板「2ちゃんねる」に公開する。公開後、瞬く間にシェアを伸ばすが、その裏では大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、次第に社会問題へ発展していく。違法コピーした者たちが逮捕される中、開発者の金子も著作権法違反ほう助の容疑で2004年に逮捕されてしまう。金子の弁護を引き受けることとなった弁護士・壇俊光は、金子と共に警察の逮捕の不当性を裁判で主張するが、第一審では有罪判決を下されてしまい……。
金子役を東出、壇弁護士役を三浦貴大がそれぞれ演じるほか、吉岡秀隆、吹越満らが脇を固める。
映画ドットコムより
感想
派手さはないけど、堅実な面白さと実際に起きた事件に対しての興味が刺激される作品。
Winny事件のなかで開発者の金子さんが捕まったことから、どのように裁判が進んでいったかが描かれており、興味深い内容ばかりで面白かったです!
現代日本の状況にもつながる部分のある事件だと思うので、そういう点でも考えさせられる余韻がありました。
日本のITの歴史の中でも大きな事件の1つと呼ばれることの多いWinny事件。
今作は、事件の被告人である金子さんの弁護側視点から描かれた物語。
当時ニュースで「Winny」の名前は聞いたことがある程度の僕にとって、裁判の模様や事件の実態など知らない内容が多くて興味深かったです。
ファイル共有ソフトによって、著作権侵害された映像や音楽などが違法に流通してしまった場合、ファイル共有ソフトを開発した人は罪に問われるのか?という事件。
作中での例えで「殺人に使われた包丁をつくった職人は逮捕されるのか」と出ているのが、分かりやすいたとえだなと思いました。
当時の警察やマスコミによって金子さんが容疑者として仕立て上げられていく様は、巨大な組織や権力による恐ろしさをまざまざと感じさせられてどんよりとした気持ちに。
それと同時に、様々な人の知識不足がこのような状況を招いた部分もあるのではないかと思わされるのも印象に残った点。
警察やマスコミが「Winny」という今までにない新しすぎる存在への理解が浅かった部分はありますが、金子さん側も良くも悪くもピュアで自分が開発したものが及ぼす影響について疎かった面があったのも事実。
世間の人々もおそらくWinnyのことをよく知らずに「なんだか危険なもの」と捉えていた空気感が漂っていたんだろうなと感じます。
(ただ、もし自分が当時社会人だったとしても、周りの人と同様に「Winnyって危なそう……」と考えたかも)
現代でも新しいIT技術やサービスが日に日に生まれる中で、僕自身、内容をよく知らないものはちらほらあるので、Winnyについて詳しくなかった当時の人に対して他人事じゃないなあ……という感覚はありました。
だけど、この作品の全体の雰囲気は深刻になりすぎないバランスなのは個性的で面白いポイント。
色々と考えさせられる事件ではあるんですが、作品の語り口が暗くないように感じます。
これは金子さんの人柄を作品の雰囲気に反映させているところもあるんじゃないかなと思いました。
金子さんはプログラム開発の高い才能を持ちながら開発が大好きで、素朴でおっとりとした人柄。
面白いアイデアが思いついたら周りが見えず集中して開発しちゃうところや、自分の作ったゲームをニコニコと楽しそうに紹介する姿、のほほんとした振る舞いや空に対する憧れなど、変わっているんだけど親しみやすさを感じられて不思議な魅力のある人だなと感じました。
(その分、あまり疑うことを知らなかったり、作ったものの影響に対して気が回らないところはあり、抜けている部分があるのはある意味人間らしい)
金子勇さんという人物の存在が作品の魅力の1つになっていたと感じました。
まさに往年のパソコンオタクという感じで、憎めない感じがたまらなかったですね。
檀弁護士たち弁護士団が金子さんの無罪を証明するため、事件の内容を追及し、裁判を戦っていく様も面白い。
檀弁護士たちは、絶対に金子さんの無罪を証明しなければならないという執念を感じさせるようで、有力な情報や証拠を一つ一つかき集め、相手側の証言のわずかな綻びを探して、真実を追求していく様はちょっとした気持ち良さがあります。
ロジックを組み立てて相手の証言を崩していくシーンは「さすが弁護士!」と感心。
特に作中で、ある特定のワードに注目し、そこから相手の証言を切り崩していくシーンは、今作の中でも印象的なシーンの1つ!
弁護士団の面々と金子さんの交流や友情もほのぼのとして暖かく、好きでしたね。
組織の腐敗を描く部分も痛切。
今作はWinny事件の裁判の模様と並行して愛媛県警の裏金事件の物語が語られ、組織や権力の腐敗による問題がより印象的になり、見ごたえのある内容になっていたと感じます。
そして、それに立ち向かう人たちがいたことも描かれており、しみじみする内容でした。
そして、エンドロールで流れる実際の金子さんの最高裁判決後の記者会見でのメッセージが流れるところに胸がジーンとします。
金子さんの人柄の良さを感じられる口調と若い人たちへのエールへの暖かさを感じると同時に、金子さんがクリエイターとして活躍できた時間の多くが事件によって失われてしまった切なさを感じていました。
ぜひエンドロールまで見たほうがおすすめ。
Winnyの技術である「P2P技術」は現在ブロックチェーンやLINEなどのサービスで広く使われている技術だし、Winny事件が日本のIT化が遅れた要因にもなったと言われるだけに、金子さんがクリエイターとしての手腕を存分に発揮していたら今頃どんな世界になっていたんだろうという切なさを感じます。
でも同時に、金子さん方が戦ったことによって、その後に続く現代で何が紡がれたかということに思いを馳せる作品でもありました。
映画の尺の関係上仕方ないとはいえ、無罪確定までの裁判の模様をもっと見たかった面はありましたが、全体的に上手くまとまっていて余韻も良かったです。
実際の事件の内容を知る上でも興味深い作品だし、しみじみとした感慨にふける良作。
現代日本にも通じるところはたくさんあるので、見る価値のある作品
(おそらく無理だろうけど、個人的には警察側の視点から描いた話もあれば見たいんだけどなあ。一つの事件を色んな視点から見たい)
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