映画『すずめの戸締まり』感想|少女と椅子の災い封じロードムービー。災害への記憶が心に残る。世界の脆さと美しさが印象的な新海監督最新作

アニメ映画
引用元:公式PVより
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最近観た映画の感想です。
今回観た映画は『すずめの戸締まり』。

近年では『君の名は』『天気の子』と立て続けに大ヒットアニメ映画を世に放ってきた新海誠監督の最新作。
上映前から大注目されていた本作、さっそく映画館で観てきました!

今回はほとんど前情報を入れずに劇場へ足を運んだので(予告編を1回見た程度)、「ストーリーや設定をほぼ知らずに観る」経験は個人的には珍しかったです。

(SNSなど見てると、なんだかんだ前情報や評判が目に入ることが多いからね)

観た感想としてはとても面白かったです!

現代日本を舞台に「日本各地に扉があり、そこから災いが訪れる」という設定が新鮮に感じたし、『君の名は』などでも魅力だった作品のテンポの良さは今作でも健在。
エンタメ作品として見やすいつくりになっていました。

ストーリーは、前作『天気の子』よりも幅広い層に受けそうな印象。

また、震災後に生きる人たちへのメッセージ性も感じられて心に強く残る場面が個人的には多かったです。

この点は評価が分かれるところはあると思いますし、震災について描く部分もあるので個々人の経験で見方は変わるかもしれません。
ただ、僕としては、このタイミングに観ることができて良かったと素直に思いましたね。

ネタバレなし感想とネタバレあり感想で分けて記載しています。ネタバレなし感想でも多少内容に触れる箇所があるので気になる方は注意

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概要とストーリー

概要

君の名は』『天気の子』に続く新海誠監督の最新作。
今作も原作・脚本・監督を新海監督が担当。

キャラクターデザインも『君の名は』『天気の子』に続き田中将賀が担当。
音楽はこれまでも新海監督とタッグを組んでいたRADWIMPS陣内一真が担当です。

声優は原菜乃華松村北斗といったフレッシュな俳優がメインキャラを担当し、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜、神木隆之介、松本白鸚といった実力派の方々も登場。

日本の古事を絡めた奇抜な設定や、少女が謎の青年と出会うところから始まる王道ガールミーツボーイ、美しい背景描写など新海誠監督らしい要素はしっかり存在。
そして、災害をテーマにした切込みはこれまでの新海監督作品にはないストーリーでした。

ストーリー

九州の静かな町で暮らす17歳の少女・鈴芽(すずめ)は、
「扉を探してるんだ」という旅の青年・草太に出会う。
彼の後を追って迷い込んだ山中の廃墟で見つけたのは、
ぽつんとたたずむ古ぼけた扉。
なにかに引き寄せられるように、すずめは扉に手を伸ばすが…。

扉の向こう側からは災いが訪れてしまうため、
草太は扉を閉めて鍵をかける“閉じ師”として旅を続けているという。
すると、二人の前に突如、謎の猫・ダイジンが現れる。

「すずめ すき」「おまえは じゃま」

ダイジンがしゃべり出した次の瞬間、
草太はなんと、椅子に姿を変えられてしまう―!
それはすずめが幼い頃に使っていた、脚が1本欠けた小さな椅子。
逃げるダイジンを捕まえようと3本脚の椅子の姿で走り出した草太を、
すずめは慌てて追いかける。

やがて、日本各地で次々に開き始める扉。
不思議な扉と小さな猫に導かれ、九州、四国、関西、そして東京と、
日本列島を巻き込んでいくすずめの”戸締まりの旅”。
旅先での出会いに助けられながら辿りついたその場所で
すずめを待っていたのは、
忘れられてしまったある真実だった。

公式サイトより引用
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ネタバレなし感想

率直に面白かったです!

新海誠監督の前々作、前作の『君の名は』『天気の子』も面白く感じましたが、今回の『すずめの戸締り』はそれらの作品に負けず劣らずの面白さ。

どの作品も結構好きですが、ストーリー全体の印象からすれば、『すずめの戸締まり』が個人的に最も好みに刺さったかも。

日本の各所に点在し、災いが訪れる原因である”扉”を閉じていく”閉じ師”の活動がメインとなる設定のストーリーは新鮮。

序盤は「どういうストーリーなんだ!?」と驚きましたが、ダイナミックなアクションシーンや、少女「すずめ」と閉じ師の「草太」の関係が旅の中で変わっていく様が描かれていて、二人の関係性の変化も見どころでした。

物語の構成はロードムービー的なストーリー。
日本を巡り、各地で起こる出来事や出会う人達との関わりを通じて、すずめと草太の関係性や過去・成長を描いていくストーリーはワクワク。

ロードムービー系作品の醍醐味を味わえました。

心に刺さる展開や割と生々しい問題にぶつかる場面もあるので、観ている人の年代や災害に対する考え方や経験で感じ方は変わるかもしれません。

僕は20代後半ですが、災害当時の世相や記憶など色々と想起させられることがあって非常に心に残りましたね。

新海誠作品の魅力である美しい風景描写は今作でも見事!
現実より美しいんじゃないかと思わせるような繊細な景色に目が惹かれます。

また、美しい情景と感じるからこそ、災害によってその美しい風景が容赦なく壊されてしまうのではないかという怖さや、美しさだけではない生々しい現実性も感じられ、背景の印象がこれまでの監督作品より際立っているように感じました。

(永遠に存在する美しさというより、その瞬間には存在する美しさを感じる)

“扉”や”閉じ師”といった風変りな設定は色々出ますが、観ているうちに自然と理解できました。
設定が難しくて内容がよく分からないということなく面白く鑑賞できたのは良かったです。

(ただ、一部の設定や展開は少々曖昧に感じた箇所がありました。それらは小説版の方で詳細に書いていたり、考察要素なのかも?)

災害がテーマの一つになっているだけに賛否はあると思います。
ですが、僕はこの時代に観るからこそ色々と思い出すことや考えることもあって印象に残る作品だったなと感じました。

エンタメ性の他にメッセージ性も感じられるし、もう少し年が経ったあとに見直すと、また感じ方が変わるような味わい深い作品になりそう。

久しぶりの新海誠最新作ですが、『天気の子』とは違う後味があった良作映画!

映画館を出た時に、ちょっと世界の見え方が変わるような感覚があり、「いい映画を観たなあ」という気持ちに浸っていました。

監督の癖が漏れてるようなシーンも今までの作品よりは少なめで、幅広い層に受けそうという印象はありました。おすすめです。

個人的には『天気の子』のセカイ系作品っぽさも大好き!

ただし、災害に関する描写が登場し、ストーリーにも絡んでいるので、そのような描写が苦手な方・抵抗がある方は鑑賞を気を付けてください。

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ネタバレあり感想

※ネタバレありで書いているので気になる方は注意してください

・日本のエンターテイメント作品で、直接的に震災をテーマにした作品はあまり見たことがなかったので、これほどの大規模公開アニメ映画で、直球でテーマにしたのは挑戦的だなと思いました。

(震災テーマの作品ドキュメンタリー系作品だと何本か見たことあったかも)

・公開タイミング的には今が良かった気がしました(人によるとは思いますが)

震災から間もない時期だとあまりに生々しいし、今の時期でも震災後に生まれてきた子供をはじめ当時のことを詳しく知らない人も増えつつあるので、このタイミングで公開する意味は大きいはず。

・冒頭の『すずめの戸締まり』ってタイトル出るところのシーンめっちゃ好き!

「お返し申す!」⇒ドカーン!!⇒ドアがバーンと閉じてタイトル『すずめの戸締まり』⇒ル~ル~ルルル~ ってところのワクワク感は異常!

・草太が椅子になる展開をよく知らずに映画を観たので、序盤でいきなり椅子に変わり「なんだその展開!?」って驚きました。少女と椅子が日本各地を冒険するという設定は見た目的にも面白い。

・椅子の見た目がキュート!
女子高校生と男子大学生の年頃の男女が日本各地を二人で旅する絵面だと微妙にセンシティブな印象があるかもしれないし、椅子の方がキャッチーで良かったと思います。

・各地の扉を締めるシーンはどれもアクティブなアクションシーンで見ごたえあり。
遊園地のシーンなど高所でのアクションがあってスリルがありました。椅子の跳躍力高すぎい!

・中盤でやっぱ東京行くんだなと。新海誠作品は東京行きがち。

・新海誠作品でよく描かれる「主人公のモノローグ」が今作はなかったり、恋愛要素がこれまでの作品より薄めだったりと、今までの作品より広い層に受けそうなつくりになっていた印象。

・主人公のすずめが魅力的ですが、その他登場人物達も良い味出してる。

・草太はもちろん、草太の友人の「芹澤」が良いキャラ!
一見チャラ男だけど、友達思いで気さくな面もあるしでナイスガイ。すずめと叔母の「環」の話で重いムードになる場面でも、芹澤みたいなムードメーカーがいてくれて癒し。

・すずめの過去が後半になるにつれて明らかになっていく展開はスリリング。
すずめの考え方に刹那的な印象があることは序盤から漂っていましたが、災害で母親や故郷を失っていることが明らかになり、すずめが昔住んでいた場所に訪れるシーンでは、思わず胸がキュッとなる。

・環さんも亡くなった姉の娘を引き取るっていう状況は凄いことですよね。
すずめに向かって積もった気持ちをぶつけてしまうシーンはどうしようもなくて悲しかった。(ちょっと唐突さはあった)

でもその後、自転車に乗りながらすずめと環がお互い話し合う場面などで2人の関係性を感じられて良かったです。
今まで、大変なことや諦めてしまったことはあったんだろうけど、それだけじゃなくて2人でいたから良かったことや大切なこともあったんじゃないかな……。

・作中では、すずめと環の普段の生活の場面があまり描かれないため、仲違いから思ったよりあっさり打ち解けあった印象もありました。
でも、そもそも人と人の関係に対する悩みなんてそうそう完全に解決するものじゃないよなあと。

母親が亡くなった事実も、すずめを引き取ったことで環の人生のかなりの時間を費やした事実も変わらないし。
この先またぶつかることもあるかもしれないけど、2人で築き上げた関係性はたしかに存在して、色々ありながらもこの先も生きていくって感じで、個人的には納得しました。

・一緒に生きたいと思える人に出会えるってええなあ……(後半部分の感想)

・最後に、すずめが小さかったころの自分に会うところは泣きそうになりました……。
災害に巻き込まれていなくなった母親を探し続けている幼い頃のすずめの姿が悲しすぎる。

どうにもならない現実がありながら、いつか大切な人に出会う”明日”がくることを伝える、大きくなったすずめの姿に希望を感じて感動。

・エンディングで、すずめと草太が駅で別れる終わり方は良い余韻。
すずめと環が家に帰る途中、旅の道中で出会った人たちと再開する展開も好きでした!

・災害によって何の脈絡も理由もなく美しい風景や日常生活が壊されてしまうのは、前作『天気の子』と少し似ている点があると感じましたね。

『天気の子』では「世界はもともと狂っている」っていう話がありましたが、今作でも個人的には、「世界は元からそういう存在であり、その中で生きていくしかない」っていう印象を抱きました。

・僕たちの住む世界も似たようなものなのかもしれないですね。

僕を含めた日本で生きている人は、地震や台風などの災害の被害を受けたり、被害を受けなくても直接的・間接的に災害のニュースを見たり影響を感じることは多いと思いますし。

その暴力的なまでの災害の破壊性を特に強く実感した出来事が震災だったのかなと。

あれは歴史的にも類を見ない災害でしたが、同時に、日本に住んでいたら地震はどこの地域でも起こりかねない可能性はあるので、どこに住んでいても唐突に悲劇に巻き込まれるかもしれないという実感は個人的にあります。

昔から世界はそういうものだったはずですが、生きていると目の前のことばかりで忙しく、ついつい気が回らない。
震災の出来事は、改めて世界は脆いということを実感させられた経験だと個人的には感じました。

(あくまで、直接大きな被害を受けなかった身だから、まだ考えが及んでいないところもあるとは思います)

・でも、そういう世界なんだとしても僕は今まで生きてきたし、これからもおそらくこの世界で当分は生きていくんだろうなと思います。

永遠に存在するものはないかもしれないけれど、今生きている瞬間に面白いと感じるものや好意的に思える人も世の中にいるんだよなあってことを『すずめの戸締まり』を観て感じましたね。

・話がまとまらなくなりましたが、とにかく『すずめの戸締まり』は面白かったです!
興味がある方はぜひ見てみてください。

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