映画『パリに咲くエトワール』を観てきました!
よくまとまった良作でした。どことなく「世界名作劇場」のような懐かしい雰囲気を感じる作品で、20世紀初頭のパリを舞台に、夢を追い求める2人の少女を中心としたストーリーが面白かったです!
エッフェル塔をはじめとするパリの風景がとても綺麗に描かれていて、「みんなが理想とする20世紀初頭のパリ」といった、異国情緒あふれる街並みの描写は、かなり力が入っていて素晴らしかったです!
作中の描写については、現実の生々しさなどはあえて省き、フィクションとしての美しさを優先していた印象。その分、純粋に異国の地で奮闘する少女たちの姿や、夢を追う中での葛藤・成長にフォーカスされていて、多くの人が親しみやすい作品に仕上がっていましたね。
薙刀を使ったアクションに思いのほか気合が入っていたり、事前に想像していたストーリーとはちょっとギャップがあってびっくりしたりなど、驚きも多かった今作。
この記事では、『パリに咲くエトワール』の感想をまとめていきます!
※結末のネタバレは避けていますが、物語の内容に一部触れる箇所があります。気になる方はご注意ください。
映画『パリに咲くエトワール』とは
『パリに咲くエトワール』は、1912年のパリを舞台に、日本からやって来た2人の少女が、それぞれの夢を追い求め奮闘する姿を描いたオリジナルアニメ映画。
監督を務めるのは、『コードギアス 反逆のルルーシュ』『ONE PIECE FILM RED』等を手掛けた谷口悟朗。脚本は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』『きみの色』等の吉田玲子、キャラクター原案は『魔女の宅急便』『崖の上のポニョ』等の近藤勝也と、数々の名作アニメを手掛けたベテランが集結。
メインキャラクター2人のキャストは、フジコ役を當真あみ、千鶴役を嵐莉菜と、フレッシュな俳優陣が担当しています。
ストーリー
20世紀初頭のパリ。
そこに日本からやってきたふたりの少女が暮らしていた。
一人は、夫を支えるよき妻となる将来を望まれながらも、画家を夢見るフジコ。
もう一人は、武家の家系に生まれ、ナギナタの名手ながらバレエに心惹かれる千鶴。
ある日、トラブルに巻き込まれたフジコを千鶴が偶然助けるが、
それは幼い日に横浜で出会ったことがあるふたりの、運命的な再会だった。千鶴の夢を知ったフジコは、同じアパルトマンに住む青年ルスランの母オルガが、
ロシア出身の元バレリーナであることを知り、レッスンを依頼する。東洋人であることで様々な壁にぶつかりながらも、ふたりは夢に向けて歩き出すが、
ある日フジコの保護者である叔父さんが、失踪してしまう。フジコと千鶴、ふたりはそれぞれの夢を掴むことができるのだろうか ――
夢見るふたりの少女とともに、100年前の華の都へ
公式サイトより
感想
千鶴とフジコ、2人の関係性と夢の行方を描いたストーリー

異国の地で夢を追う少女達のストーリーとして、ストレートに面白かったです!
画家を夢見る「フジコ」と、薙刀道場の娘でありながらバレエへの想いを抱える「千鶴」。タイプの異なる2人の関係性と、それぞれの夢と向き合う姿勢の対比が非常に印象深かったですね。
時代背景として「女性は家庭を守るもの」という教えが主流の中、日本を遠く離れてパリにきた2人。フジコは明るく社交的で、物怖じせずに色んな人と話せる少女。一方の千鶴は、武家の家柄を気にしてバレエへの憧れを内に秘めてしまうタイプ。
そんな千鶴の想いに気づいたフジコが彼女の夢を応援し、たまたま知り合った元バレリーナの女性と千鶴を繋いでレッスンのきっかけを作るなど、フジコの存在が千鶴の夢に光を与える関係性は素敵でした。
ただ、僕はポスターの印象から「2人が共にそれぞれの夢を追いかけるサクセスストーリー」を想像していたのですが、実際は少し異なっていて、独特なところだなあと思いました。

作中の内容に触れますが、物語のメインとして夢を追う姿が描かれるのは千鶴の方。
画家を目指してパリに来たはずのフジコは、意外にも絵を描くシーンがあまり登場せず、中盤くらいまで「あれ?フジコの画家の話ってどうなってるんだっけ」って薄っすら頭をよぎるほど。
フジコは保護者である叔父が失踪し、街外れへ引っ越したり、生活費を稼ぐため働く必要が出るといった状況になります。
日々の忙しさで目の前の事を優先したり、他人のサポートにある種の充実感を覚えているように見えたり、優れた才能を目にして自信をなくしたり……。色々と理由をつけて、自分の夢に向けて時間を割けない様子は、個人的に共感させられました。
夢を追うはずが、生活していると他にやることがいくつも湧いてきたり、つい後回しになってしまうことってあるよね……。

フジコが社交的なタイプな分、新たな場所で働きつつ、千鶴の夢をサポートをしている姿は、傍目にはそこそこ充実しているようにも見えます。でも、夢以外のことを優先していると、夢にかける時間が減って、理想からどんどん遠ざかる様子は、なんだか身につまされる気分。
「うまくいくかどうかじゃなく、とりあえずやってみる」という精神が大事なのに、なんだかんだ理由をつけて後回しにする感じが、ある意味リアル。
作中で「”そのうち”という言葉を吐く人間が何かを成し遂げたためしがない」みたいなセリフが所々で登場し、「いや、本当にその通りですよね……」と、僕自身も妙なダメージを食らいました……!
千鶴がバレエの道へと進む展開は、王道的な成長物語で面白い。先生との絆や、バレエ団で頑張る様子など、爽やかな感動があって良かったです。
その千鶴の姿が巡り巡って再びフジコに影響を与えていく。2人の関係性とストーリーが、上手くまとまっていましたね。
意外なアクション要素と魅力的なキャラクターたち

バレエと画家の夢を目指す2人の少女の話のはずなのに、アクションが意外と充実!
千鶴の薙刀による殺陣アクションが大半なのですが、動きが自然かつ細かく作画されており、迫力もあって、力の入ったバトルシーンでした!
序盤、フジコと叔父さんがチンピラ3人組に絡まれそうになった際、たまたまその場に訪れた千鶴が薙刀で撃退するシーンがあるのですが、このアクションがこだわって作られていて見応え抜群!千鶴の足さばきも軽快で格好いい。
さらに、チンピラの中に1人だけ、何の説明もなく棒術を駆使するやたら強い男(通称:棒術マン)が混ざっていたのはちょっと笑いました。
身のこなしといい、ステッキの扱い方といい、明らかにタダモノではない存在感……!出番こそ少ないものの、強烈なインパクトを残していました。
他のキャラクターも魅力的でした。
千鶴にバレエを教えるロシア出身の元バレリーナ・オルガは、ストイックな雰囲気の中に優しさを秘めた素敵な女性でしたし、 バレエ団に所属する少女・マチルダは、ツンツンしているようで技術的に必要なことはしっかり伝えてくれる子で、千鶴との関係性も印象に残りました。
基本的に登場人物は、明確に嫌な奴が登場せず、みんないい人でしたね。
ストーリーに関しても、現実の生々しい人間関係や人種差別的な苦労など、描こうと思えば描ける要素をあえて省いた内容で、見やすさを重視したつくりに感じました。
美しい背景描写と時代背景がもたらすストーリーの推進力

パリの背景描写は美しかったですね!
20世紀初頭のパリの異国情緒あふれる街並みが丁寧に作画されていました。
エッフェル塔やセーヌ川などパリを代表するランドマークも登場して、「理想のパリ!」というイメージが表現されていて綺麗。見栄えするビジュアルばかり!
(実際の歴史では、衛生面とかで汚れた場所もあったそうですが、この作品ではそういう面はなかったです)
近藤勝也さんの柔らかなキャラクター原案が、1912年のパリの街並みに溶け込み、どこか懐かしく温かい質感を作品全体に与えています。世界名作劇場とかジブリ作品に通ずる雰囲気があるのは、ここら辺によるものなのかもしれない。
また、フジコと千鶴の成長物語を軸にしつつ、舞台設定が1900年代初頭ということで、第一次世界大戦の足音が少しずつ近づく描写が定期的に差し込まれるのも物語に効果的なスパイスを加えていました。
平和なパリの日常に、戦争の気配が少しずつ、しかし確実に迫ってくる様子が、ちょっとした緊張感を与えています。
一種のサスペンス要素になっており、「この輝かしい時間がずっと続くわけではないのかも」という事実が、タイムリミットのような役割を果たしていました。
先の展開が気になる推進力と物語の深みを生み出していたと感じます。
個人的に気になった点など
全体的に面白かった良作でしたが、個人的に気になった点や、人によっては好みが分かれそうだと感じたポイントもいくつかありました。
・唐突な薙刀バトルシーンなど、フィクションラインが思ったより高い場面があります。エンタメとしては面白いけど、たまに「急になんだこの展開!?」と割と力業に見える展開は、いくつかありました。
・千鶴の成長ストーリーが目に付きやすい分、フジコの印象が薄く感じる時があり、鑑賞前のイメージと違いました。フジコが夢に向かって積極的に挑戦する話を想像していたので、中盤までは物語の盛り上がりがスロースターター気味に感じました。もう一回観れば、序盤の印象は変わりそう。
・バレエのダンスシーンに3DCGが導入されているのは悪くないけど、手書きの作画パートから急に切り替わると、質感の差に少し違和感はありました。
・良くも悪くも登場人物が基本的に善人で、問題にぶつかっても割とすんなり乗り越える場面もあります。サクサク進む良さはありますが、この時代や舞台設定からイメージする困難に対し、2人の少女が壁を乗り越えて泥臭く成長するドラマを期待すると、意外とあっさりした印象を感じる人はいるかも。
おわりに

以上が『パリに咲くエトワール』の感想です!
全体としてよくまとまっており、パリの背景美術など作画面も綺麗で、観終わった後にスッキリとした気持ちに包まれる映画でした。
世界名作劇場やジブリ作品を彷彿とさせる温かい空気感もあり、どこか懐かしい感覚にもなりましたね。
過度に意地悪なキャラクターも登場しないため、あまりストレスなく鑑賞を楽しめました。
20世紀初頭のパリを舞台にした少女たちの奮闘を描いた王道的展開の良さもあり、世代を問わず幅広い層が楽しめる良作!
今年のアニメ映画だと『超かぐや姫!』も面白かった!『ハサウェイ』や『ミルキーサブウェイ』も面白かったし、2026年は豊作ですね。

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